離婚に向けて証拠集めをしたい

離婚手続きを進める上で納得のいく結果を得られるか否かは、いかに証拠を集めることが出来たか否かで決まるといって過言ではありません。

一言で離婚といっても、離婚自体が認められるか否か(離婚事由に関するもの)、親権者は誰にするか(親権者指定に関するもの)、養育費はいくらにするか、財産分与はいくらでどのように分かるかなど、決めなければいけないことはたくさんあります。

そして、そのそれぞれに証拠が必要になってきます。
ここでは以下についてご説明します。

1離婚事由に関する証拠

①不貞

調査会社の調査報告書

調査会社の調査報告書は、不貞が認められるための典型的な証拠です。

例えば、夫が別の女性と一緒にホテルから出入りする場面や夫が女性のマンションに入り、次の日に出てくる場面などの調査報告書が上がってくれば、裁判所が不貞を認定してくれることはほぼ確実です。

しかし、考えなければならないのは、費用の点です。調査会社に長時間の張り込みをお願いした場合、非常に高額の調査費用がかかってしまう可能性があります。そのため、最終的に得られる利益の見込みも考慮して、調査会社に依頼するか否か検討する必要があります。

写真

不貞をするカップルは、自分たちの不貞行為の写真を記念に残しておくことがあります。しかも、妻が簡単に発見できるところに保存していることもあります。このような写真はもちろん、不貞の証拠になります。

メール、ライン

メールやライン等で不貞を伺わせるような内容を送りあっている場合もあります。

②暴力

警察の記録

夫に暴力を振るわれて、110番通報したり、警察が急行して対応したり、警察署に相談に行くと、警察でそれらが記録され保管されています。

相談に行った管轄の警察署か本部(警視庁や県警本部)で個人情報開示請求の手続きをすると、その記録を取ることが出来ます。

診断書、診療記録

夫に暴力を振るわれて、怪我をして病院で受診した場合、その記録が診療記録(カルテ)に残っています。診察の際、夫から暴力を振るわれた旨説明すれば、そのことも記録されていることが多いです。

カルテはカルテ開示の手続きをして、診断書は、診断書の作成を医師にお願いして、入手することが出来ます。

写真

夫に暴力を振るわれ、痣になったり、傷ができた場合は、写真を撮っておきましょう。その怪我が自分のものであることが分かるように、自分の顔と怪我部分が入るように撮影しましょう。

音声

暴力のときの音や、「殴るのやめて!」「やめて!」という声等を録音しておけば、暴力の証拠になります。

③暴言、モラハラ等

日記、手帳

暴言を吐かれたり、脅迫されたり、説教されたり、不合理なことを言われたりされたりしたら、そのたびにその具体的な内容、日時、場所等を日記や手帳に記録しておきましょう。難しく考えずに、自分が恐怖を感じた、辛い気持ちになった、嫌な気持ちになったら、その原因となった夫の言動を記録しておきましょう。

メール、ライン

夫からのメールやラインも、モラハラといえる内容の場合があります。夫のラインやメールを見るのも辛く削除したくなってしまうと思いますが、削除したりせず、大切に保存しておきましょう。

音声

夫が大声で罵倒したり、説教したりする音声を録音しておきましょう。

2離婚を阻止するための証拠

夫が妻に離婚請求をしてきて、妻が離婚したくない場合、妻は離婚事由がないこと婚姻が破綻してないことを主張立証することになります。

それについて以下の証拠が考えられます。

写真

夫婦、家族で一緒に外出しや外食をしたり、くつろいでいるときの写真は、婚姻が破綻していないことの証拠になります。

日記、手帳

夫婦や家族で出かけたり、夫婦としての日常についての記載は、婚姻が破綻してないことを示すことが出来ます。

旅行等の明細

夫婦や家族で旅行に行き、同じ部屋を予約していることや、一緒に食事にいったことが分かるような明細も夫婦が壊れていないことを示します。

ラインやメールなどのやり取り

夫婦の日常的なラインのやりとり、メールのやりとりも、夫婦が破綻していないことを示します。

3親権者指定に関するもの

親権者指定に関しては次のものが考えられます。

母子手帳

必要な予防接種や検診をきちんと受けていることを示します。母子手帳だけで父母の誰が予防接種や検診に連れて行ったかは分かりませんので、別の書面で説明も加えることになります。

保育園や幼稚園の連絡帳

父母のどちらが連絡帳の記載をしているか、どのような内容を記載しているが、誰が送迎をしていたかなど連絡帳から分かります。

日記、手帳

日記や手紙の中に育児についても記載されていれば、どのような育児がされてきたか分かる場合があります。

4養育費に関するもの

養育費は父母双方の収入を基に決められますので、収入が分かる資料が必要です。

課税証明書

住民票で夫婦の世帯が一緒の間は、配偶者の課税証明書を取ることが出来ます。別居する前にとっておくと良いでしょう。

源泉徴収票

源泉徴収票は、勤務先が本人に発行するものなので、本人でないと取ることは出来ません。調停が始まってから、裁判所の指示で双方提出することになります。

確定申告書

自営業者の場合は、確定申告書で収入を判断することになります。

もっとも、自営業者の場合は、確定申告の数字をある程度操作できてしまうのが実情です。確定申告の数字が不自然に低い場合は、その数字のもととなる資料を出してもらうなどします。

ただ、裁判所の指示でも、夫側が資料を出さないこともあり、その場合は、それまでの生活実態(毎月の世帯の収支など)から推測して判断する場合もあります。

家計簿

夫が自営業などで、収入資料も出してこない場合、同居中に妻がつけていた家計簿などで、毎月の収支を出し、そこから収入を推測して決める場合もあります。

5財産分与に関するもの

預貯金通帳

同居中に貯めた預貯金を示すものは、それぞれの名義の口座の通帳や取引明細です。

通帳のコピーや取引明細をとれなくても、夫が使用している銀行名と支店名が分かれば、後で調べることが可能です。ですので、少なくとも、夫が使用している銀行名と支店名の情報は確保するようにしましょう。

株式等証券関連

夫が株式や債券を有している場合は、証券会社に口座があるので、その証券会社の情報を確保するようにしましょう。

不動産全部事項証明書

不動産の情報については、土地と建物の全部事項証明を法務局で取ることが出来ます。

不動産を購入するとき、妻の実家の援助を受けて頭金に充てたという事情がある場合は、それが分かる証拠も必要です。例えば、不動産購入の直前に、妻の父親名義の口座から、妻の口座に入金されたなど、通帳に記帳があれば、それも証拠として取っておく必要があります。実家の援助を証明することが出来れば、その部分は、婚姻財産から除外して妻の特有財産(妻の財産)として計算することが出来ます。

生命保険

解約返戻金がある生命保険も財産分与の対象になります。解約返戻金額については保険の名義人のみが保険会社から取ることができ、妻が夫の保険の解約返戻金額を示す資料を取ることが出来ないのが通常です。ですので、これは、調停等が始まってから、裁判所に夫に対して指示してもらうか、裁判所の調査嘱託という手続きで照会をかけて情報を得ることになります。

iDeCo、つみたてNISA

最近はやりのiDeCoやつみたてNISAも、婚姻中の夫婦どちらかの収入を積み立てている場合は、財産分与の対象になります。口座のある証券会社の発行する別居時点の残高証明書で残高を確認することになります。

これも、調停等で裁判所から夫に資料の開示を指示してもらうか、裁判所の調査嘱託手続きで照会をかけて情報を得ることになります。

企業年金・企業型確定拠出年金

企業年金、確定拠出年金も財産分与の対処になります。これについても、調停等が始まってから、裁判所に夫に対して明細を提出するように指示してもらうか、裁判所の調査嘱託手続きで照会をかけて情報を得ることになります。

退職金

退職金も財産分与の対象になるので、忘れないようにしましょう。

退職金は別居時に退職したと仮定した場合の退職金見込み額の婚姻同居期間に相当する割合が財産分与の対象になります。この退職金見込み額は夫が勤務先から出してもらう必要があります。夫が、自分で取ろうとしない場合は、裁判所の調査嘱託という手続きで夫の勤務先に照会をかけることになります。

離婚手続きでは以上のような証拠が必要となってきます。もっとも、このような証拠が全てしっかり揃っているケースは稀です。一部の情報でもそこから調べることが可能だったり、工夫して進めることが出来る場合もあります。ですので、証拠がないから、離婚できないかも、財産分与も認められないかもと、心配しすぎず、まずは弁護士に相談してみてください。

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この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

2000年10月 弁護士登録(第一東京弁護士会所属:53期)。
弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、年間100件以上の相談を受けてきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。
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