離婚に向けて別居したい
何らの準備なく別居をすることはお勧めできません。別居を考え始めたら、次のことをしてください。
もっとも、夫から身体的な暴力を受けているなどの場合は、自分や子の安全を第一に考えて、速やかに別居してください。
以下、ご説明します。
目次
1証拠集め
離婚手続きを進める上で納得のいく結果を得られるか否かは、いかに証拠を集めることが出来たか否かで決まるといって過言ではありません。
一言で離婚といっても、離婚自体が認められるか否か(離婚事由に関するもの)、親権者は誰にするか(親権者指定に関するもの)、養育費はいくらにするか、財産分与はいくらでどのように分かるかなど、決めなければいけないことはたくさんあります。
そして、そのそれぞれの項目に次のような証拠が必要になってきます。
離婚事由の証拠
- 不貞(調査会社の調査報告書、メール、ライン等、写真、)
- 暴力(警察の記録、診断書、カルテ、写真、音声)
- 暴言、モラハラ(日記、手帳、メール、ライン等、音声)
離婚を阻止するための証拠
- 写真、日記、手帳、カレンダー、旅行明細、ライン、メール、
親権者指定の関する証拠
- 母子手帳、保育園や幼稚園の連絡帳、日記、手帳
養育費に関するもの
- 課税証明書、源泉徴収票、確定申告書及び添付書類控え、家計簿など
財産分与に関するもの
- 預貯金通帳、株式等証券関連、不動産全部事項証明書、生命保険、退職金
もっとも、証拠については、これがなければ絶対にダメということはなく、決定打はなくても、関連する資料を複数組み合わせて、事実を証明できることも多いです。ですので、少しでも関連ありそうだなと思う場合は、なんでも集めて大切に保管しましょう。
また、財産関連については、内容が分からなくても、金融機関名、支店名から後で調べることが出来る場合もあります。ですので、夫が少しでも利用していそうな金融機関があれば、その名前や支店名等の情報を記録しておきましょう。
2資金準備
別居するためのお金の準備が必要です。
例えば、自分の親の協力の下、別居後、実家で生活をする場合は、別居時、別居後のお金についてあまり心配する必要はないかもしれません。しかし、実家が遠方だったりと、実家の協力を得られない場合は、自分で別居資金を準備しなければなりません。
この点、婚姻中、妻が家計預貯金を管理している場合は、そこから一部別居費用を支出することは問題ありません。もっとも、離婚で財産分与を決めるときに、別居費用について、清算することになる可能性はあります。
妻に全く自由になるお金がない場合は、何らかの仕事を開始して、別居のためのお金を貯める必要もあるかもしれません。
もっとも、DVで別居をして、シェルターに保護された場合は、状況に応じて、生活保護を受給できる場合もあります。
別居後すぐに家庭裁判所に婚姻費用(生活費)分担請求をすることになりますが、正式に決まるまでの仮の支払いを夫に求める場合でも、夫がすぐに払ってくれることはあまり多くありません。「勝手に出て行ったんだから、俺には妻の生活費を払う義務はない」と主張する夫も少なくないです。少なくとも、引っ越し費用と半年分程度の生活費を確保してから別居した方が良いと思います。
3居住地確保
別居するためには、別居後に自分や子供が住む場所を確保する必要があります。
自分の実家の協力を得ることが出来る場合は、別居後、実家で生活することも良いでしょう。遠方などで実家の協力を得られない場合、自分で住所を借りるなどして転居先を確保する必要があります。
ここで、離婚の原因は夫にあるのだから、夫が今の家から出て行って、妻と子で今の家でそのまま生活したいと思われる方もいらっしゃいます。しかしながら、夫が自分から家を出て行かない限りは、夫を家から追い出すことは出来ません。妻が別居したくて、夫が家を出て行ってくれない場合は、妻が家を出る必要があります。
DVのケースの場合は、シェルターに保護された後、母子生活支援施設等の施設での生活や自治体のケースワーカー等のサポートの下、生活保護を受けて、民間のアパート等を借りることも状況に応じて可能です。
4弁護士探し、依頼
別居を決行する前に是非弁護士に相談、依頼して、弁護士を別居後の窓口としてください。別居するにあたり、夫の同意を得る必要はありませんし、夫に何も言わずに出ても問題ありません。
もっとも、突然、妻が別居すると、夫は、妻の親族や友人に連絡したり、警察に行方不明者の相談にいく可能性があります。また、別居後、離婚の手続き等に進むにしても、弁護士に依頼しないと、結局は自分で夫からの連絡などの対応をしなければならず、精神的な負担も大きいのが実情です。
そこで、別居に先立ち、弁護士に依頼し、別居と同時又は直後に弁護士から夫に受任の通知をして、弁護士が窓口になることを知らせて、離婚やそれに関連することは全て弁護士を通じて行う形にした方が良いです。
妻が未成年の子を連れて別居する必要がある場合は、子をめぐり、夫との争いが熾烈になることが多いので、なおさら弁護士に依頼して進めることをお勧めします。弁護士からすぐに夫に通知するのと同時に、弁護士を代理人として、家庭裁判所に必要な手続き、離婚調停、婚姻費用調停だけでなく、監護者指定など子に関する手続きも必要に応じて申し立てましょう。
5離婚届不受理申出、行方不明者届不受理申出
夫の中には、妻が家を出たと知ると、勝手に離婚届に自分と妻の署名をして、離婚届を出してしまう人もいます。
妻も最終的に離婚を希望している場合でも、何も取り決めしないで、離婚だけ成立している状態では、そのあと、条件の話をするにしても、話し合いがスムーズにいかなくなる危険があります。
さらに、子どもがいる場合で、夫が勝手に子の親権者を自分と指定して離婚届を出してしまうと、親権者を変えるための、離婚とは別の手続きも行う必要があり、手続きの負担も大きくなってしまいます。
そのような事態を避けるため、別居前に離婚届不受理申出を本籍地に出すことをお勧めします。離婚届不受理申出は、一度出すと、申出をした本人が取り下げない限り、離婚届は受理されません。また、離婚届不受理申出が出されているか否かは、実際に離婚届を出そうとしない限り、相手には知られることはありません。
また、妻と子が家を出たあと、夫が警察に行方不明者届を出す場合があります。行方不明者届が出されていると、警察が、その妻子を見つけたときは、それを行方不明者届人(夫)に知らせることになり、妻子の居場所が夫に知られてしまう可能性があります。そのため、別居前に行方不明者届を最寄りの警察に出すことをお勧めします。
6別居決行
別居するにあたっては、自分の物、同居しようとする子の物、同居中自分が使用していたものは、出来る限り持って別居した方が良いです。別居時にもとの家に置いてきたものは、例え、自分の物であっても、戻ってこないことも多いです。
婚姻中に購入した家財道具、電化製品は、厳密には夫婦共有のものです。そのような夫婦共有の家財道具などで、同居宅に置いてきたもの、別居先に持ってきたものは、後の調停でどちらが取得するか話し合う必要が出てくることはあります。
以上、離婚に向けて別居したい場合についてご説明しました。このように準備するにしても、何か行動する前には必ず弁護士にご相談ください。無意識で行った言動が後の手続きで思いがけず不利に働いてしまうことがあります。そのような事態を避けるためにも、是非、弁護士のアドバイスの下で進めることをお勧めします。