離婚調停を申し立てられた
夫が離婚の調停を申し立てたようで、家庭裁判所から、調停の期日通知が来ました。どうすれば良いでしょうか。
目次
1 離婚調停とは何でしょうか
(1) 夫婦関係調整調停
まず、離婚調停はどういうものなのか、理解しましょう。
離婚調停は、正式名称は、「夫婦関係調整調停」といい、家庭裁判所で調停委員会を介して話し合いをし、解決を目指す制度です。
調停委員会は、中高年の男性と女性1人ずつの調停員と裁判官の3人で構成されています。裁判所の調停室で、調停員が当事者双方から交互にお話を聞き、合意に向けて調整します。調停員会のメンバーの1人である裁判官は、複数のケースを同時に抱えているため、常に同席するのではなく、調停が成立するときや成立しないで終了するとき、その他、調停の進め方について協議するときなど、同席します。ですので、基本的に2人の調停委員とお話をすることになります。
調停員は、中立な立場で話し合いを仲介することになっていますが、調停合意を目指しているからか、優しそうな当事者、物分かりの良さそうな当事者に譲歩を促してくることも少なからずありますので、注意する必要があります。
(2) 夫婦が対面する必要はない
離婚調停では、当事者が対面して話をすることはありません。
当事者が別々に交代で調停員とお話します。
以前は、調停の最初に調停員から双方同席して、調停の手続き説明を一緒に聞いて欲しいと言われていたのですが、おそらく、殆どのケースで皆さん同席を拒否していたのでしょう。最近は、同席で手続き説明を聞くことを求められることは無くなりました。
裁判所で当事者が出会ってしまうことも避けたい場合、裁判所に集合時間をずらしたり、待合室の階を異なる階にしてもらう、などの配慮もしてもらえます。
さらに、コロナをきっかけに裁判所が電話会議やWeb会議を導入し始め、最近は、DVのケースなどでも電話会議やWeb会議にしてもらえる場合もあります。
(3) 秘密は守られる
離婚調停は、非公開の部屋で行われ、秘密は厳重に守られています。調停でお話した内容や、提出した書面で相手等に秘密にしたい部分があれば、その部分は相手に伝えないことを求めたり、書面の該当箇所を黒塗りにして提出することが可能です。
この点も、公開の離婚裁判と異なる部分です。
どうしても公開の離婚裁判にはしたくないというどちらかの当事者の意向から、離婚条件について有利な形で話し合いができる場合もあります。
2 離婚調停を無視していいの?
離婚調停は、話し合いの場所で、裁判官が離婚や離婚条件を決める場所ではありません。調停で離婚や離婚条件の合意を強いられることもなく、調停に出席しないことも可能です。
裁判所から、出頭勧告がありそれにも応じなかった場合、一応、5万円以下の過料、つまりペナルティの規定はありますが、離婚調停で、裁判所が当事者に出頭勧告をすることは稀で、過料を科されることはまずありません。
この点も、出席しなかったり、無視していたりすると、原告の主張どおりの判決になってしまう離婚裁判とは異なる部分です。
しかしながら、裁判所からの調停通知を無視することは得策ではありません。
あなたが調停に出席しないままでいると、まもなく、調停は不成立で終了します。そして、相手は、離婚訴訟を提起してきます。
その場合、もし、あなたが離婚したくないと考えていて、裁判所からの調停通知を無視した場合、そのような不誠実な態度について、相手から裁判の中で主張され、あなたに不利な事情として離婚裁判で影響する可能性があります。
また、離婚についてどうしようか方向性が固まっていない場合でも、調停に出席して、相手の言い分を聞くことで、今後どのような対応をするのが自分にとってより良いか方針を立てやすくなります。
ですので、いずれにしても、裁判所からの調停通知は無視せず、担当書記官に電話連絡するなど、きちんと対応することが必要です。
3 まずは弁護士に相談しましょう
あなたが調停通知を受け取ったら、なるべく早く弁護士に法律相談しましょう。そして、どのような方針で進めるか、弁護士に依頼するかを含めて検討し決めましょう。
弁護士に相談していない状態、まだどのような方針でいけば良いのか分からない状態で、調停に臨むことは避けましょう。
家庭裁判所から調停期日通知を受け取ったということは、2~3週間くらい前に夫が妻に対する離婚調停を家庭裁判所に申し立てたことになります。調停が申し立てられると、家庭裁判所は、調停期日(調停が実施される日時)を決め、調停の相手方(妻)に対して、第1回調停期日の通知を郵送します。
第1回調停期日は、申立人(夫)と申立人代理人弁護士の都合と裁判所の都合がつく日時を相手方の都合を聞かずに決められます。そのため、第1回目調停は、相手方が都合付かないで欠席のまま、申立人と申立人の代理人のみが出席して実施されることが多いです。
第1回期日に相手方(妻)が欠席しても、その後の手続きで相手方(妻)の不利になるようなことは特にありません。
ですので、まだ弁護士に相談できていないのに、どうしたいのかまだ決まっていないのに、無理に第1回調停期日に出席する必要はありません。方針が決まっていない状態では、むしろ、調停に出席しない方が良いです。
もっとも、期日に都合がつかないことと、その次の期日の都合のつく日程を第1回期日の前に家庭裁判所の担当の書記官に連絡しておくと良いでしょう。
弁護士に法律相談して、その結果、どんな離婚条件であっても、離婚に合意しないという方針なら、弁護士に依頼せずに、ご自身だけで調停に出席し、その旨を伝えるので良いと思います。その場合は、調停で離婚について合意がまとまる見込みがないので、その調停の日、又はその次の調停で離婚調停は、調停不成立で終了します。
もっとも、夫から離婚請求をしてきているということは、妻にとって有利な条件で離婚がまとまる可能性もありますので、その状況を生かす形で調停での話し合いに応じるという選択肢もあります。
その場合は、どのような対案を出して、どのような条件なら、自分にとって有利か、離婚の実務に詳しくないと判断が難しいので、是非弁護士に依頼して、弁護士と共に調停に臨むことをお勧めします。
4 婚姻費用分担調停申し立て
もし、夫からの生活費の支払いが不十分なら、婚姻費用(生活費)の調停も離婚調停と同じ日に同時に進めてもらうよう、申立をしましょう。
自分は離婚を希望していないのに、婚姻費用の調停を申し立てたら、離婚が進んでしまうのではないかと心配される方もいらっしゃいます。
しかしながら、婚姻費用の請求は婚姻継続を前提とした請求なので、婚姻費用を請求したから離婚が進むということにはなりません。また、基本的に調停を申し立てた月からの婚姻費用が認められますので、躊躇することなく、早めに婚姻費用調停を申し立てましょう。
婚姻費用は日々の生活に直結することなので、家庭裁判所は、離婚調停と婚姻費用調停が同時に係属している場合は、まずは、婚姻費用について話し合いを進めます。
婚姻費用は、基本的に双方の収入をベースに決め、もし、当事者間で合意が出来ない場合は、裁判所が決める審判という手続きに自動的に移ります。そのため、婚姻費用については、何も決まらないまま終了するということはありません。
婚姻費用について調停が成立した後、引き続き離婚について話し合いが進みそうなら、離婚について進め、離婚について話し合いが無理となれば、離婚調停は不成立とします。
きちんと婚姻費用を決めてから離婚について検討するという方針も可能です。