不貞慰謝料請求したい方
夫が別の女性と浮気している場合、その女性に対して不貞慰謝料請求することを検討してみましょう。
目次
1不貞慰謝料とは
まずどういった場合に不貞慰謝料請求できるのでしょうか。
女性が、妻帯者である男性と、その男性が妻帯者であることを知りながら不貞行為をした場合、妻は、その女性に対して、不貞慰謝料請求ができます。
2どのような行為が不法行為になるのか
不貞行為の典型としては、肉体関係ですが、裁判例では、肉体関係がなくても、他方配偶者の婚姻生活の平和を壊す行為であれば違法で不法行為になるとしています(東京地方裁判所平成22年12月21日判決)。
具体的には、キス、手をつなぐ、抱き合う、体に触れるなども不貞行為類似行為として不法行為になる場合がありますが、この点は、担当裁判官の考えによって判断が分かれる可能性があります。
3証拠
不貞相手に不貞慰謝料請求するには、証拠が必要です。
(1)どのようなものが証拠になるか。
1つだけの証拠で不貞だと証明できる場合もありますが、複数の証拠から不貞が推測される事案が大半です。
探偵(調査会社)の調査報告書
例えば、別々でも同時でも2人がホテルに入っていき、翌日、ホテルから出てきたことがわかる報告書があれば、不貞関係があったことの証拠になり得ます。もっとも、最近の判例で2人でホテルに入ったことは認定しつつ、ホテルでは何もしていないという女性側の主張が認められて、不貞が認められなかったという判例があります。今までの裁判例にかんがみると、かなりレアな判断で、特別の事情があったのではないかと思われる判例ですが、このような判断がされてしまうと、調査報告書の調査だけでなく、その他の証拠も必要になってきます。
メールやラインのやり取り
旅行の予約のやり取りや、性的関係をうかがわせるやり取りがあれば、証拠になります。
写真
不貞をする男女は、不貞行為について、「記念写真」を撮っていて、以外なことにその写真を無防備に保管していることが少なからずあります。そのような証拠は、明らかに不貞の証拠になります。
夫の自白
不貞行為について、夫が自ら告白する場合もあります。その録音や、書面に書いてもらったものも証拠になります。
(2)探偵(調査会社)を使用することについて
上で述べたとおり、調査会社の報告書は不貞の典型的な証拠になります。もっとも、調査会社に調査を依頼する場合の費用は、高額なことが多いです。しかも、夫のスケジュールが不規則で何日もの張り込みが必要となると、簡単に100万円以上の費用になってしまいます。そして、その費用は、訴訟で一部不貞女性に負担させることが出来ることもありますが、大半は自分持ちです。
したがって、調査会社に依頼するか否かは、金銭面についての今後の見通しや、手続きする上でご本人が何に重点を置かれているかなど、様々な観点から調査会社に依頼すべきか否か判断する必要があると思います。
4進め方
ある程度の証拠もあり、不貞慰謝料請求を進めることになったら、どのように進めれば
良いのでしょうか。
(1)内容証明郵便などで請求
不貞慰謝料請求の方法としては、内容証明郵便での請求が考えられます。
必ずしも内容証明郵便でなければいけないというわけではないのですが、例えば、消滅時効の期限が迫っている場合は、請求した時期を明確にするために、内容証明郵便で行うのが良いです。
相手のメールアドレスや電話番号は知っているが、住所が分からない場合、メールや電話で請求することも可能です。
(2)話し合い
内容証明郵便でもメールでも電話でも、何らかの形で請求し、相手から反応があれば、話し合いが始まります。
もっとも、相手の反応が、慰謝料を支払う意思がないもの、または、妻が納得できない少額の提案をしてきたという場合であれば、話し合いは決裂(終了)となり、訴訟を検討することになります。
相手の提案に応じるか否かは、訴訟をした場合にさらにかかる費用や訴訟での見込み額などを考慮して判断します。
(3)訴訟提起
請求したけど、相手が無反応又は相手からは到底合意できない提案が来たという場合は、話し合い決裂で、訴訟を提起することになります。
訴訟を提起する際の請求額は、通常は、内容証明等で請求した額と同じ額にすることが多いです。具体的には300万円から500万円で請求します。
感情的な問題で、300万円や500万円など納得いかない。5000万円請求したいというように非常に高額な請求を希望される方もいらっしゃいますが、高額で請求したからその分最終的な額も高額になるという訳ではありません。
また、訴訟を提起する際に裁判所に提出しなければならない印紙代は、請求額をベースに計算されますので、あまり高すぎる金額で提訴することはありません。
(4)裁判和解又は判決
訴訟提起後は、もし、相手女性が不貞自体は認めるが、慰謝料の額を争っている場合は、裁判官は、まずは和解での解決を試みます。
この場合、裁判官の提案に応じるか否かは、判決になったときの見込み額や、回収可能性(相手の支払能力)など考慮して、判断します。
和解が出来なければ、裁判所で双方本人尋問をして、裁判官に判決を求めます。
5損害金
(1)慰謝料
裁判所が不貞慰謝料として認める相場は、100万円から200万円が多いです。
具体的な金額は、婚姻生活の長さ、子の有無、不貞行為により破綻したかなど様々な事情を考慮して裁判官が決めます。
この点、裁判官の不貞に対する考え方も影響することもあります。
(2)調査費用
調査費用(探偵費用)は、場合によっては高額になるので、その費用も慰謝料に加算して請求したいところです。
この点、不貞がなければ、調査会社に依頼する必要はなかったのですから、調査費用も不貞行為を関係がある(因果関係)損害といえます。
過去の判例でも、慰謝料に加算して認めた事案があります。
もっとも、調査費用全てが認められている例は稀で、ごく一部だけが認められています。また、調査費用については、一切損害として認めない裁判例も多数存在します。
(3)弁護士費用
判決の場合、弁護士費用については、裁判所が認めた慰謝料額の10%程度が弁護士費用として加算されて認められることが多いです。
6不貞相手によるあるある反論
(1)既に婚姻破綻していた
不貞慰謝料請求をして必ずといっていいほど不貞相手から主張されるものとして、「破綻後の不貞」です。
これは、平成8年3月25日の最高裁判所判決で「不貞行為があった場合でも婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、原則不貞相手は妻に対し不法行為を負わない」と判示したことから、不貞相手から、「破綻後の不貞」と主張がされるようになりました。
ただ、実際、裁判所がこの「破綻後の不貞」の主張を認めることは非常に稀です。
例えば、別居を開始してから何年も経てから出会って交際したとうことが明確に証明されないかぎり、不貞相手は、「破綻後の不貞」を主張することで慰謝料の責任を免れることは難しいです。
(2)消滅時効
不貞慰謝料請求の消滅時効は、損害および加害者を知ってから3年です。
具体的には不貞の事実を知り、不貞相手の名前と住所が分かった時点からということになります。
(3)既婚者であることを知らなかった
不貞慰謝料が認められる要件として、不貞相手が男性が既婚者であることを知っていた又は知らなかったことに過失があったことが必要です。この点は、男性と不貞相手が出会った状況などから、「知っていた又は知らないことに過失があった」か否かが判断されるようです。
例えば、会社の同僚の場合は、家族関係を知り得る環境ですので、既婚者であることを知らなくても知り得た、つまり過失があったとの判断の可能性があります。
飲食店で出会い男性が独身だと嘘をついていた場合は、既婚者だと知らなかったことに過失なしと判断される可能性があります。
(4)ホステスなど枕営業
平成26年にホステスとの不貞行為について、ホステスが顧客と性交渉を反復継続しても、枕営業の一環と認められる場合は、婚姻の平和を害するものではない、妻に対する不法行為は成立しないとの東京地方裁判所の判決がありました(平成26年4月14日判決)。
しかしながら、この事案を担当した裁判官はそもそも不貞相手に対する不貞慰謝料請求は認めるべきでなないという考えの持ち主で、その考え方が色濃く反映された判決でした。
その後の「枕営業」の事案では、相手がホステスや風俗嬢であっても通常の不貞事案と同じように、妻に対して不法行為が成立するとの判例は複数出されています。
したがって、今後もホステスなど営業目的であっても、性交渉があれば、不貞行為として慰謝料が認められる可能性が高いと思います。