子供の問題の相談

夫婦間に子どもがいる場合は、離婚時だけでなく、別居時から熾烈な争いになることが多いです。場合によっては、妻が子を連れて家を出たが、その後夫が子を連れ戻したというような子の取り合いのような事態が生じかねません。
弁護士に依頼し、相談した上で進めてください。

以下のよくある状況についてご説明します。

1 妻が子を連れて別居したところ、夫から監護者指定と子の引き渡し請求を起こされた。

子の出生から現在までの監護状況、今後の監護計画を裁判所にしっかり説明する必要があります。

もし妻が子の出生から別居まで子の主たる監護者で、別居後の子の監護状況も特に問題がなければ、夫から申し立てられた監護者指定審判手続きで、そのまま妻が監護者と指定される可能性が高いので、あまり心配する必要はありません。

しかしながら、夫の主張に対して反論を提出したり、妻が子の出生から主たる監護者であったかを、裁判所に対して、詳細に説明をするなどして、夫から申し立てられた手続きにきちんと対応する必要があります。家庭裁判所の調査官調査について、どの点を調査して欲しいかの意見も提出することもあります。

ですので、早急に弁護士に依頼して、弁護士と相談しながら手続きを勧めることをお勧めします。

2 夫が家を出て行ったが、子も連れて行ってしまった。

直ちに、子の監護者指定と子の引き渡しの審判を保全処分の申立をしてください。

もし、子の出生から妻が子の主たる監護者だった場合は、妻が子の監護者指定及び子の引き渡しの審判をすることで、裁判所は、妻を監護者と指定して子を妻へ引き渡しように命令を下す可能性があります。

しかしながら、夫が子を連れて行った経緯や、夫が子を連れて行ってから時間が経ち、夫の下で子が問題なく生活し、家庭生活、学校生活など定着してしまった場合は、子を取り戻すことが出来なくなってしまう可能性があります。

したがって、1日も早く、弁護士に依頼して、子の監護者指定及び子の引き渡しと保全処分の申立をしましょう。

3 妻が子を連れて別居した。夫からはまだ手続きを申し立てられていないが、夫が子を取り戻そうとしてくるのではないかと怖い。

家庭裁判所に監護者指定審判の申立をしましょう。

以前は、例えば、既に子が妻の下にいる状態(妻が監護している状態)なら、改めて、監護者を指定する必要はないとう裁判所の考えもありました。

しかし、最近は、子の奪い合いのような事件も増えてきたことから、このような場合でも、妻から監護者指定も審判を申立すれば、裁判所は判断をしてくれることが通常です。

裁判所に妻が監護者と指定してもらえば、仮に、夫が子を奪い返そうとすれば、それは明らかに違法であるので、夫に対する抑制になります。

また、監護者指定審判は、離婚時の親権者指定争いの前哨戦ともいえ、例えば、監護者指定審判で、妻が監護者と指定された場合は、離婚時の親権者も妻と指定される可能性が非常に高いです。そのため、妻を監護権者と指定する審判が出た場合は、離婚時には、夫は親権については争わず、その分、早期に解決するということも期待できます。
したがって、弁護士に依頼して、監護者指定の審判を申し立てましょう。

4 妻が子を連れて別居をしたところ、夫は、面会交流を請求してきた。

子にとって何か一番良いかを考えて、面会交流について決めましょう。

一時期、裁判所は、面会交流を実施するのが原則というスタンスで、子と同居している親にかなり強硬に面会交流を説得しようとしていたこともありました。

現在でも、裁判所が面会交流を実施することが原則だという考えは変わっていないのですが、以前より、具体的な事案に対応した進め方をしているようです。特に、子が乳児の場合は同居親の状況、自分の意思を表明できる年齢(小学校中学年から高学年以上)の場合は、子の気持ちを尊重した上で、面会交流の方法を決めることも少なからずあります。

妻(母)が子と共に別居した場合、妻(母)の心情を子が察して、子が別居している夫(父)との面会交流を拒否する場合もあります。父との交流が子にとって悪影響だという事情がない場合は、母子の生活に支障きたさない形で父子の交流方法を考えることが必要な場合もあります。

5 妻が子を連れて別居したが、以降、夫から生活費の支払いがない。

婚姻費用分担請求をしましょう。

夫は妻に対して、婚姻費用(生活費)を分担する義務を負っていますが、この「婚姻費用」には養育費が含まれます。そのため、婚姻費用を請求することで、子の養育費も請求することになります。
夫が妻に婚姻費用をいくら支払う必要があるかについては、夫婦双方の収入をベースに「算定表」に基づいて決められます。「算定表」は、家庭裁判所のホームページに掲載されており、検索エンジンで「婚姻費用 養育費 算定表」で検索すれば、見つけることが出来ます。

6 夫が離婚には応じているが、親権について争っている。

裁判所で決めてもらう必要があります。

夫婦間に子がいる場合、夫婦間で離婚について合意していても、親権者についての決まらなければ、離婚は出来ません。
例えば、離婚調停でその他の条件については合意に至っていても、親権について合意が出来なければ、その離婚調停は不成立となり、別途離婚訴訟を提起する必要があります。

離婚訴訟で、親権の争いがある場合は、子の監護状況について調査官調査が実施されることが多いです。もっとも、調停の時点で既に子の監護について調査官調査が行われたとか、既に監護権者指定の審判が出ているような場合は、事情の変化などない限り、改めて調査官調査をすることは少ないです。

親権者指定の基準は、監護権者指定の同様の基準で、出生から現在までの主たる監護者が親権者と判断されることが多いです。

ただ、子が15歳以上の場合は、子の意見を取り入れる必要があるため、子が簡単な文書を書いたり、調査官が子から話を聞くなど、何らかの方法で、子の意向が反映されます。

7 離婚後の子の養育費

離婚時に子の養育費について取り決めましょう。

離婚後、子と同居していない親は、子に対して、子の養育費を支払う必要があります。

養育費は、父母双方の収入をベースに「算定表」に基づいて決められます。

ときどき、1日も早く夫と離婚したいため、養育費の請求をしない条件で離婚したという方もいらっしゃいます。養育費は子の権利なので、母親が養育費を請求しないと言ったとしても、子は父親に養育費を請求できます。

もっとも、基本的には養育費の請求は請求した時点からとされることが多いので、子が物心つき、養育費を請求したとしても、一部過去分が認められたとしても、過去分全部をさかのぼって認められることはなく、子にとって得られたであろう養育費が得られないという事態になってしまいます。

ですので、親権者としては、安易に放棄はせずに、子のためにも養育費についてきちんと取り決めする必要があります。

8 面会交流

面会交流については、母子にとって負担の多くない方法で考えましょう。

離婚時、親権者とならない父(夫)から面会交流についての取り決めを求められることが多いです。子に害になる事情がなければ、一般的には面会交流は実施した方が良いと思います。

しかし、ここで、離婚を1日も早くしたいために、母子にとって負担の多い形で、面会交流を約束してしまうことも散見されます。

しかし、離婚後の母子の生活は、特に子の年齢が小さいころは、想像以上に忙しいです。平日は母は仕事と子は保育園生活で、帰宅後も夕食、お風呂、翌日の準備など母子共にやることが満載です。また、週末は、平日行けない習い事に行ったり、平日できない家事買い物をしたり、母子でゆっくり過ごす時間もないほどです。

また、子の年齢があがると、子の学校のクラブ活動や習い事、塾など、子自身も忙しいスケジュールです。なので、あまり頻繁な面会交流を約束すると、実現できなく可能性もあり、紛争が再燃してしまうこともあります。

もっとも、父母の間で一定の信頼関係が築くことが出来ていれば、子の一部の習い事を連れて行くのは父としたり、1日、父子が一緒に過ごす時間を作って、母のために母の1人の時間を作るなどの柔軟な決め方も出来るかもしれません。

あくまで母子の負担が少なく、子にゆとりが感じられ、楽しめる頻度、交流方法を決めることをお勧めします。

この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

2000年10月 弁護士登録(第一東京弁護士会所属:53期)。
弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、年間100件以上の相談を受けてきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。
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